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デーモン民子 19 

「ふむ。派遣か。」
アイアムニート。リビングの食卓テーブル片隅にある今日のチラシ。その内一枚に求人広告が入っていた。

寄生虫に真っ向から「生理的に無理。」と言い放った私によりディープインパクトを与えられた寄生虫もとい元の担任は、朝のHRで「民子は家庭の都合によりモニョリン☆」とクラスメイトに説明したらしい。ところがどっこい。セカンドインパクトが起こったらしい。私は別に何と寄生虫が元のクラスメイトに言おうとどうでも良かったんだけど、奈美が寄生虫のHRプレイ中に言ったそうだ。

「あたしもつまんないしやめよっかなー」

これが発端で静寂に包まれた教室があった。他の教員からさらに白い目で見られはじめたであろう寄生虫は『このアマ!』って面持ちだった。って、他の子が爆笑しながら電話をしてきた。奈美はどうやら使徒だった。ど、どうりで・・・

ニートという横文字職業に転職した私はそんな事は後日談として知る。世間的にはどうみても華麗なる下落街道まっしぐらな分際だけどお腹を抱えて笑った。ざまぁwwって表記がお似合いの瞬間です。性根が悪い民子です。

チラシの求人広告は後でじっくり拝見しよう。まずは安売りに目を通すぜ。母君の節約に協力せねばのう。あれ?コーコーの無駄金使わせたのはアテクシじゃね?
おや。近所のスーパーで砂糖が1kg100円だ。これは買いだ、買い。母はお菓子作りが好きで得意。欲目を用いなくても、店で出される洋菓子となんら見栄えも味も大差ない腕前だ。砂糖もいる・・だろう。うん。試食専門だからわかんないけど。

お菓子の材料がストックされている棚には、べーきんぐぱうだーだとか何語なのかわかんない缶や、バニラエッセンスと「良い香りなのよアタシ」みたいな感じで書いてるはずなのに味見したら強烈に苦かったバニラ。どれが小麦粉でどれが薄力粉?って勢いで業務用の粉が陳列されている。なんだ、この鉛みたいなものは。こんなのお菓子に使うの?釣り用のルアーの親戚じゃないの?
母は職業柄多忙。滅多に作る時間と気力が無いけど、合間をぬって作ったりする。私は物心がついたときから結婚するまで、バースデーケーキは母が作ったものしか食べた事がなかった。

"お一人。様につき2個まででよろしくお願いいたします"

チラシの激安スーパー(国産)にあったこの文字を見て幼少期に見た戦場が過ぎった。このスーパーに限ったことじゃないけど、おばさんの見てくれを気にしない女放棄した姿を見た幼女民子。リーダー各であるおばさんは、レジを通り越したサッカー台の脇に夫と見られる男性を一人立たせて、尚かつ娘らしきお連れ様がやたら多い。お一人様2個までだから、例えばおばさんが2人連れてたらおばさん入れて3人。6個のお砂糖ゲットだぜ。こりゃピカチューも驚愕じゃろう。そして、サトシなおばさんは戦利品の6個のお砂糖をサッカー台に待たせておいた夫らしき男性にレジ袋ごと渡す。そして再び戦線の前線に立つ。部下を率いて、さっき並んだレジとは別のレジに威風堂々とお砂糖を6個持ち立つのだ。幼女は驚愕した。ピカーァァァ?!
ず、ずるい・・・と思うけど、これは反則じゃないの?とにかく恐ろしや。おばさんの根性と、堂々としてる様が。ここまで色んなものを捨てて得た物は砂糖。砂糖には隠された魅力があるというのであろうか。
っておばさんの主食は砂糖か。

私は大人のセコケチ節約術(笑)を幼少期に( ゚Д゚ )って見ちゃったものだからトラウマになった。今の私はダラ奥エセ主婦と相変わらずどうしようもないけど、これだけは未だに真似ができない。いや、真似したくねえ。スーパーの人に申し訳ないぞえ。

おばさんだったりピカチューだったりが織り込んだけど、求人募集のチラシの一角に派遣会社を見つけた。

「ねえ、母さん」
「へ?」
魂が抜け疲弊しきった夜勤明けの母が、定位置であるいつもの茶色い年期の入った椅子に腰掛けてた。目は半開き。口は前回。あそこから魂が出ているに違いない。

「派遣ってどう?」
どう?ってどう?って感じだけどどう?

「派・・遣会社・・・?派遣登録するの?」
虫の息。

「うん、出来れば。登録出来るかな。年齢制限は書いてないけど。単純な流れ作業でも出来ればいいな、と」

母が少し現実に戻って来た。おかえりなさい、ママーン。
「そうねぇ。でも、変な会社だったら辞めておいてね。その会社の評判聞いてみようか?」

母は顔が広い。というか、可愛がってくれている人が多い人だ。だから離婚して養育費慰謝料を一銭も貰うことなくやってこれたっていうのもあると思う。看護師ということもあっただろうけれど、知り合いがいる病院から色々と引き抜きの話もきていた。

「いやぁ・・・魂抜けてるしいいよ。私が変だと感じるのも社会勉強ということで、エライ事になる前まで自力でいく」
「たましい?」
「色々思ったことがあれば教えてくれる?空いた時でいいから。」

チラシを見てから行動が早かった。電話をし、アポを取って翌日。さっそく駄目モトで派遣会社に登録をしにいった。こんな若造を雇ってくれるか不安だし派遣の意味も「はい?」だし、チキンハートに目一杯の蓋をして私はその会社のスリッパを履いた。
派遣の仕組みなんて『会社経由でどこかの仕事を紹介してくれる』程度の知識。未知の世界だし、バイトと何が違うのかもよく分かってなかった。なにもかも勢いで遣りすぎるのは私の悪い癖かもしれない。

「お?あなたが民子さん?電話くれた」
「はい。初めまして。民子と申しゃ!」
噛んだ。
緊張でガッチガチやぞ。
前日にかけた電話で「無知でごめんなさい。どんな服装で行けばいいのでしょうか」と聞いたら笑って「普通の恰好でいいですよ。」と答えてくれた人と、声が、トーンが一緒だ。
その人は斉藤さんといった。
それからお茶を出してくださり、沢山説明してくれた。そして「あなたなら出来ますよ。頑張りましょう。僕がついてるからね。」と心強い言葉をかけてくれた。
一気に緊張が解れた瞬間だった。
斉藤さん(男・56歳)はとにかく可愛がってくれた。なのにも関わらず、斉藤さんはしがない平社員だと思ってた私は彼がこの会社の重役だったとしって呆然とし、心で謝り倒した。
登録してからすぐ、17の私でも出来る仕事を沢山貰えるようになっていく。
沢山斡旋してくれる登録会社の斉藤さんの思いに答えたい。
"賃金が発生している以上賃金以上の誠意と結果でやってやる"という、本来学業に向けるべき熱意を、私は派遣・バイトでMAXに燃やした。
そりゃもう機関車の如くだ。
機関車のように石炭なんかの着火剤は民子機関車という暴走機関車青葉号に途切れる事はなかった。新しい作業、新しい人間関係、なにより私が不真面目なんぞになっちゃえば、斉藤さんの株に影響しかねない。不真面目だったのは少ない高校生活だけでいい。
それぞれが積み重なり着火剤になる。唯一数学で「こりゃ楽しいぞ♪ウホ♪」と思った因数分解が解けた時より快感と自己満足があった。

毎日が忙しくなった。ジョブにジョブで斉藤でジョブに明け暮れる。ジョブにジョブジョブ漬かっていると、どこか退屈に感じていた一日はあっちゅー間に過ぎていった。
同時に小五郎の相手も忙しくなっていった。精神面で。私がジョブジョブすることで、小五郎が果てしない嫉妬を燃やすようになっちまった。
ジェラシーは派遣先の上司、主に斉藤さん・男の環境・会社の環境、隅々だ。
ちょっと待て、まだ彼女じゃないでやんすよ。

そういえば、小五郎に学校を中退したのは何もかも学校のことが片付いてからだった。
その時小五郎に「学校辞めたんだ~」ってサラッと言ったら「ハーイー?」と、タラちゃんと化した返事が返ってきた。その後プンプンした小五郎を初めて見た。私には、プンプンしちゃった小五郎お仕置きが待っていた。


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[ 2009/02/13 01:52 ] 結婚前 | トラックバック(-) | コメント(-)